Mendelssohn: Elijah, 1846

2015.06.21 | classic+ |

Elijah 1846

Mendelssohn: Elijah, 1846
Gabrieli Consort & Players
(signum: SIGCD300)

マクリーシュのシグナム録音はジャケットが印象的だ。ほとんど白地に丸いシールを貼りつけた仕上がりは、並べてみるとシールの位置がバラバラで、テキトー感が際立っている。それとも何かの暗号なのだろうか。

バラバラと言えば録音するレパートリーもベルリオーズのレクィエム、イギリスの合唱曲のオムニバス、1595年のヴェネツィアの戴冠式の再現もの、メンデルスゾーンのエリヤ、ブリテンの戦争レクィエム、クリスマス音楽のオムニバス、そしてヘンデルのオラトリオ「快活の人、沈思の人、温和の人」と結構バラバラ。彼はアルヒーフ時代もいろいろやってたけど、なんだこれ?

メンデルスゾーンのエリヤを英語版で演奏しているというのがいかにも彼らしい。それともイギリス人はみな英語版を選ぶだろうか。1846年のバーミンガムの音楽祭が初演で、この時演奏されたのは英語版。その後いくたびかの変更が施されて、ライプツィヒでドイツ語版が演奏されるに至ったのは翌年とか。今はドイツ語版が主流になっている感があるけど、当時は英語版が先行してドイツ語版は後だった。19世紀のイギリスは音楽の一大消費地だから、メンデルスゾーンもイギリス公演の方が気合が入って喜びも大きかったんじゃないかと思う。マクリーシュの演奏は、この一大消費地ぶりを大いにアピールする。合唱団だけで300人というのはすごい。でも、こういう作品ごとのサイズ感というのは大事だ。特に歌い手たちは、自分たちの合唱団のサイズに変換することによる演奏への影響というものをいつも考えておかないといけない。

メンデルスゾーンは、自分のオラトリオの主人公にパウロ、エリヤ、キリストの3人を選んだ。例によって思い切り雑な言い方になるけど、この3人には当時のユダヤ人社会と難しい関係にあり、これを打破したという共通点がある。ユダヤ教からキリスト教に改宗したユダヤ人としてユダヤ人社会からも反ユダヤ人社会からも微妙な立ち位置にあったメンデルスゾーンにとって、この3人は彼にとって特別に近しい存在だったのかなと思う。あるいはスーパースター的な。そういう存在を描くための音楽を自ら作り出すというのは、きっと胸躍るイベントだっただろう。

ちなみに、英語版を手に取ったのは、ドイツ語版で構築されたフレーズとは異なるフレッシュなフレーズが聞こえてきたりしないかな、という興味関心からだったんだけど、さすがはメンデルスゾーンと言うべきか、作品のつくりが頑丈にできているのであった。

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